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デザイン思考が世界を変える

デザイン思考が世界を変える (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

デザイン思考が世界を変える (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

この書籍ではデザイン思考がイノベーションを起こすための新たな武器として紹介されています。

”デザイン”というと大きく二つの意味があると思います。「外観の設計」と「機能や品質の設計」です。
エンジニアは後者にかかわるものと考えられ、前者は美術(芸術)専攻を修めたものの役割と考えられているが、この書籍ではその区別をすべきではない、ということが言われているように思います。

著者はIDEOのCEOでIDEOの事例が多く紹介されていて、デザインもしくは設計とは言わないような分野、コンサルのような視点をもって問題解決に挑んでいます。
IDEOは世界でもっともイノベーティブな会社といわれ、古くはアップルの「マウス」をはじめ、スポーツ用品から医療器具、日用品、サービスまで多くの開発を手掛けてきました。

グーグルのオフィスにはおもちゃがあったり、ピクサーには海の家があったり、というのはイノベーションの象徴のようになっているが、重要なのはそのようなものではなく、実験を行いリスクをとり、異分野連携をとることである。
また、仕事が初めから決められている中ではイノベーションは起きないとされています。
成功には報酬を与えるが、失敗しても許されるという文化が必要なのです。

マテル社では「カモノハシプロジェクト」というものがあります。
3か月間組織の参加者を別の場所に集め独創的な新製品のアイデアを生み出させる、というものです。
実際に良いアイデアが生まれ、参加者は新たなスキルを身に着けるが、プロジェクトから通常業務に戻ると、アイデアを実現するような働き方ではなく生産性の追求を強いられ、結局会社から去っていくということが起きました。
プロジェクトを解散した後それを会社に根付かせる、というところまで考えておかなければこのような方策は意味がないという結果です。

とある病棟の新棟の設計においては、実際にデザイナーが入院の手続きを体験してみて、病院側の人間からの視点と入院患者側の人間の視点での合理的または心地よい空間には矛盾があることを実感してみる、ということをやっています。両方の視点があることで、依頼者(病院側)が考えもしなかった、壁紙の模様が患者にとって不安感を増長するとか、考えてみれば些細なことのように思われるところにユーザーエクスペリエンスの改善効果があることが分かりました。

つまり、物理的な設計ではなく認知的な事象を設計することも必要であり、このようなことを「デザイン思考」と呼んでいます。
インテグレーティブシンキングとも呼ばれ「2つの相反する考えを対比させて新しい解決策を導く」ことを目的としています。

バンクオブアメリカでの事例では、預貯金を増やしたい、という銀行の要求に、デビットカードでの支払時に端数を自動的に貯金するというサービスを提案しています。
既存のデビットカードの支払いに対して、追加行動なしに実施可能なサービスによって新しい事業が成立しました。
ここには、「ひとはなぜか切りのいい金額を支払いたがる」という気持ちがあることに気づいたことが大きな発見です。

一見するとセグウェイイノベーションの典型的な成功事例に見えますが、実際には成功しませんでした。
歩くには遠く、車に乗るには近い距離の移動手段として設計されましたが、実際にはアパートの階段を引きずって登ったり、乗っている姿が街中では気まずく、郵便局員にはバッテリーが足りないという失敗例でした。
これは、試作をしての実地試験が足りていなかったためにそれぞれ何かが足りていなかった結果でした。
もっと実施試験をしていれば、軽量になり折りたためるなどのように改良され市民に広がっていたかもしれません。

サービス業は一般にイノベーションが不足していると書かれています。
アメリカ運輸保安局(TSA)は空港でのセキュリティチェックの体験の改善を試みていました。乗客の旅行への興奮を覚めさせずセキュリティを維持することを考えていました。
そこでは、IDEOは凶器の検出ではなく、悪意の検出に目を向けました。女性がハンドバックの中にネイル用のハサミを持っていても危険になることは少ないが、ソフトドリンクの空き缶が凶器になることもあるからです。

初期のWikipediaは専門家が記事を作成していました。
しかし、9か月かかっても12の記事しか作成できなかったのに対し、「参加型」にすることでアマチュアが1か月で1000を超える記事を作成する結果となりました。

まとめ

IDOE社を中心に多くのイノベーションの事例が紹介されています。これらの事例については読むだけでも面白いです。
また、イノベーティブになるための方法として、ポストイットによるブレインストーミングの手法やバタフライテストについても触れられています。
しかし、これを読んだからと言ってイノベーティブになれる、ということはもちろんありません。

イノベーションを起こすには、試作をしてみるのが一番の近道だとかかれています。しかし、試作には通常時間(リードタイム)が掛かります。そう考えると頭の中で考えることのほうが早い場合もあります。また、最終的にはレポートをすることを考えると、頭の中を整理しておくことは結局無駄にはなりません。

イノベーションに必要なのはデザイナーやエンジニアにとっての心理的安全性、つまり失敗が許されしかし成功には報酬がある環境、だからです。

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