プログラミング素人のはてなブログ

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可変DC電源を設計する

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電子工作において、電圧を可変できる電源があると便利です。

安い可変電源もAmazonにはあるのですが、簡単なものを作ってみようと思いました。

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ネット上の情報をもとに最も簡単な回路を設計しました。
入力はスイッチング電源をDCジャックから入力し、出力もDCジャックと、並列にピンヘッダを出そうと思います。
スイッチは、スライドスイッチとタクトスイッチを設置します。
タクトスイッチは短い時間だけ出力させるためで、出力先の回路に不安があるときに活用できると思っています。
パイロットランプとして赤色LEDを載せています。
電流は入力が12V以上で発光するように選択しています。

部品は、このために入手したのは3端子レギュレータと手で回せるタイプの可変抵抗ぐらいで、あとは在庫品を使っています。

出力調整用の可変抵抗

基準抵抗となる、320Ωと可変抵抗(5kΩ)の比によって3端子レギュレータのADJへの入力電圧が決まります。
これによって、出力の電圧が決まります。

出力電圧の分解能が不足しそうなら可変抵抗を二つ使うことも考えましたが、ブレッドボードで試してみたところ、低出力(5V以下)側で0.5V程度、高出力(5V以上)で1V程度の分解能で調整が出来そうなので、上記回路図のような形にしました。

下記のような方法を考えていましたが不要でした。

理論的には5kΩの可変抵抗が一つあればいいのですが、調整範囲が広くなれば分解能が不足します。
なので、出力の低い部分での設定分解能を得るために二つ使います。
つまり、出力が低い領域(10V程度以下)では小さいVR2(0~1kΩ)を使い、出力が高い領域では、大きいVR1(0~5kΩ)とVR2を併用します。
これは、秋月電子のキットの製作マニュアルに記載の抵抗を切り替える手法に発想した応用です。

コンデンサの役割

出力側のC2、C3 + C4は容量とタイプ(電解コンデンサとセラミックコンデンサ)の異なるコンデンサを並列に使います。
これは、容量が違うことでノイズ(電源変動)の周波数に対して広く性能を得ることが出来るとされています。
入力側も同様ですが、入力はDC市販の電源を使うので、そこまで不安定にはならないと思い1つにしました。

電源電圧の変動の低周波成分ではアルミ電解コンデンサが主要な役割を果たし、高周波成分ではセラミックコンデンサが主要な役割を果たすようになり、広い周波数帯域に渡って電源電圧の変動を防ぐことができる

バイパスコンデンサ - Wikipedia

ここでは、出力側に付けるセラミックコンデンサが手持ちで耐圧が小さいものしかなかったので、直列にしています。
これで、コンデンサにかかる電圧は”理論上”半分になります。
本当は抵抗を並列に入れたほうがいいらしいのですが、壊れたら改良しよう、ということで今回は無しにしました。
アルミニウム電解コンデンサ - 詳細 | エルナー株式会社

ダイオードの役割

一言でいえば逆電圧がかかったときに素子を守るためですが、ノイズ対策のコンデンサから電圧変動時に逆電流が流れることで、ここでは3端子レギュレータを壊すことを防止するためです。
コンデンサは通電後には充電され、電源と同じ意味を持ちます。
これをダイオードによって電流を誘導し安全に放電させるということだと思います。

実装

本来ならCADで配置を設計するのでしょうが、実物を置きながら場所を決めました。
同時に配線もなるべく交差しないように考慮します。
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完成

完成状態を反対側から見たの図
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3端子レギュレータが高さがあったので、足を切ってさらに斜めに配置しました。
何かのおまけのヒートシンクがあったのでちょうどよい大きさだったのでつけておきました。
スライドスイッチとDCジャックはユニバーサル基板に刺さらないタイプだったので、オスのピンヘッダを利用しています。

3端子レギュレータとDC出力ジャックは力がかかりかねないので、ホットボンドで補強してあります。
(3端子レギュレータが発熱したらホットボンドが溶けるかもしれないが、いまのところ思ったより発熱しない。…ならヒートシンクいらないんじゃ?)
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まとめ

回路さえ考えれば楽勝、と思って始めましたが基板を作るのは奥が深いですね。
しかもありあわせの部品を使おうとすると、コンデンサの耐圧が足りなかったり、参考資料と出力範囲や可変抵抗の性能が違ったり、いろいろありました。

ブレッドボードで3端子レギュレータを試したときの動画
youtu.be
パスコンの効果を確認した動画
www.youtube.com

種類 仕様 数量 単価(円)
3端子レギュレータ LM350T/出力33V 1 130
スライドスイッチ 1 20
タクトスイッチ 1 3
可変抵抗 5kΩ 1 50
抵抗 2kΩ 1 2
抵抗 320Ω 1 2
LED 1 6
ダイオード 1N4148 /100V/200mA 2 2
電解コンデンサ 100μF/25V 2 2
セラミックコンデンサ 0.1μF/16V 2 20
DCジャック オス 1 30
DCジャック メス 1 50
ピンヘッダ 4ピン 1 2
ABS樹脂ケース 1 130
合計 473

※3端子レギュレータ、可変抵抗、ダイオード、セラミックコンデンサ、ケースは秋月電子で購入。それ以外はAmazonの中華部品。

参考

http://akizukidenshi.com/download/ds/akizuki/ae-lm338_ae-lm350.pdf
https://www.marutsu.co.jp/contents/shop/marutsu/datasheet/368777.pdf
https://jp.rs-online.com/web/p/linear-voltage-regulators/6710299/
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電子工作の職人技

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  • 作者:高瀬 和則
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